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連続短編小説「漂流教室(ある意味)」vol.3

※vol1と2がまだの方はそちらからお読み下さい。

私は師亡き後もウクレレを続ける事にした。
とりあえず××ギター・ウクレレ教室へ体験入学。
するとウクレレ講座にもかかわらず、講師はまず持って来た
ギターでおもむろにポロロと「禁じられた遊び」を弾き出した。で、
「やっぱ、ギターっていいよね」…ギター・ウクレレ教室だから
仕方ないのだろう。ウクレレ・ギター教室ならちょっとはウクレレの
立場も違ったのだろう。もう一件も体験入学したがそんな感じであくまでも
ウクレレは主役というよりは伴奏楽器という教え方で、亡き(だから殺すな)
かの講師のウクに対する愛情は誰よりも強かったのだと顧みる。ああ、あの
教室がありさえすれば…と思いつつ、月日は過ぎ、私のウクレレも箪笥の肥やしと
なっていった。

そして翌々年くらいであろうか、一通のDMが届いた。やな予感。
「違う場所で新しく教室始めました!!来てねっ♪」と何事もなかったかのよな内容が。
「あ、先生、生きてた」という安堵。そして「良かったね…絶対もう行かねえけどな」と心でつぶやいた。こうして理由もわからぬまま失踪事件は幕を閉じた。

あれからもう10年が過ぎた。再開した教室が続いているかどうかも、わからない。
けれどもしその講師がぐぐってここを見たら、私の身も危ないかもしれない。
消される前に大好物の、アレを食べておこう。かじかんだ手をストーブにかざす。
春は確実に地面の下で準備を始めているのだろう。それが地表に出るのももうすぐだ。

先生、あの日の牧伸二は、もう弾けません。

                        --完--
エンディングテーマ・「マドンナたちのララバイ」(出来れば)

あと書き・結局失踪の理由が分からないという、ぐずぐずの最後ですみません。
完読して下さった方、ありがとうございました。バトン結局先週出来なかったので
次回はきっと。ええ、きっと。
連続短編小説「漂流教室(ある意味)」vol.3_c0008888_2123261.jpg

by ryokoubato | 2006-02-07 21:25 | ドキュメンタリー
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