今日の猫村さんレビュー

第一の衝撃はジムのプールにいた時だった。
その日、何気なく休憩所に積まれていた雑誌を一冊手に取り、めくるとある漫画の広告が載っていた。「今日の猫村さん」…なんじゃそら。一度見たら忘れられない味のある絵、そして、主人公は猫なのに家政婦であるという、その見た事もない設定…私はその後プールでクロールをしている間もさっき見た猫の家政婦の事で頭が一杯になり、もはや泳ぐどころではなくなっていた。早々に切り上げ、本屋へと急ぐ。3軒目にしてようやく手に入れたその本は、宝物のように輝いて見えた。

そしてめくると第2の衝撃が。全編えんぴつ書き…これは漫画を描く過程で言うと「ネーム」という段階なのではなかろうか。ラフ描きとか。セリフも手書きのままだし。日頃ペン入れやスクリーントーンの切り貼りに精を出してる方達に合掌である。昔、ノートに鉛筆手書きで漫画を描いて友達と見せ合っていた子供の頃を思い出した。これはそう、プロの漫画作品というよりは、同級生が授業中、先生の目を盗んでノートとかに描いてたのがすっごい面白いものを作ってしまったという感覚である。だからといって万人が出そうと思ってもなかなか出せない味。簡単に真似出来そうで出来ない、これがプロの証である。もう、何なのだ。一言では語れないこの魅力。体中の関節が抜けそうなユル具合、シュールさ、かといって「ほのぼの」という言葉ではとうてい収まりきれない、そんな危険な匂い(ある意味)も放ちつつ、主人公猫村さん(職業・家政婦)は鼻歌を歌いつつ着々と家事をこなしていく。

魅力的な不完全さは、どんな完全にも優ってしまうのかもしれない。そう、人間でも完璧な人よりもどこか欠けたものを持った人の方により惹かれてしまうように。
その証拠に、この脱力系の最終兵器「猫村さん」は今日もどこかで誰かのハートを撃ち抜いているようだ。
きょうの猫村さん
ほし よりこ / マガジンハウス
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by ryokoubato | 2005-09-18 01:58
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